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学校との連携回数、100回を突破!実践事例報告会で語った、高校での外部エキスパート無償活用事例3選

記事の概要

2025年12月26日、一般社団法人ミラパブは、神奈川県高等学校教科研究会主催のイベント「実践事例報告会」に参加しました!
 
こちらの会は、毎年全国より教育関係者の方々200名以上が参加されている、教育系の学会です。具体的には、毎年全国より様々な情報科教員の方々がそれぞれの授業実践の事例を共有する会であり、参加するすべての教育者が互いの知見を共有し合える、建設的な事例共有のイベントとなっています。

私たちは2022年から毎年こちらの学会における事例報告に携わらせていただいていて、今年は関東圏内だけでなく、全国規模で展開した授業支援活動の報告を行いました。

この記事では、私達が報告した授業の実践事例について、画像等を交えながらご紹介いたします。このイベントに興味を持たれた教育関係者の方々にとって、こちらの記事が何らかの参考になれば幸いです。

愛知&京都&神奈川での事例発表

知県立緑丘高校の支援を担当した
プロのプログラマー、もりくらげ。

今年度は、私たちの活動の幅の展開を打ち出した事例発表を行いました。
実は私たちミラパブは、今年に入るまで東京都、神奈川県以外での授業支援活動が殆ど行えていませんでした。その原因は純粋な知名度の不足によるものであり、私たちは都心以外の場所で、外部のプロの力を無償で求めている地方の教員の方々のお手伝いをすることができていませんでした。

しかし、これまでの地道な授業活動、学会での発表活動が実を結び、今年の夏以降からは日本全国から授業のご相談が入るようになってきました!例えば愛知県や京都府、北海道や兵庫等、様々な地域から授業支援の相談が入っていて、嬉しい悲鳴を漸く挙げられているところです。
結果今年10月、ついにミラパブは教育機関での授業支援回数、累計100回を突破することが出来ました!この結果は教員の方々の私達への信頼のおかげ様であり、日々私達を信用し授業の相談をしてくださっている教育関係者の皆様には、改めましての感謝をお伝えさせていただきます。

そんなこともあって、今年の実践事例の発表では全国での授業事例の中から3つを取り上げて、それを紹介するという、例年以上に豪華な発表に取り組めることとなりました!

詳しい内容は記事最後に載せた発表動画にありますが、時間の無い教員の方向けに、以下にそれぞれの事例の概要を簡単にまとめておきました!

愛知県立緑丘高校での文化祭支援

一つ目の事例は、愛知の高校におけるシューティングゲーム作りのお手伝いです。

文化祭当日のゲームの様子一部抜粋。

今年の9月頃に、私たちは愛知県立緑丘高等学校における高校1年生のクラスの文化祭の出し物づくりの支援活動を完全無償で行いました。対象となった方は高校1年生の1クラス(40名)であり、文化祭の出し物でトロッコに載ってのシューティングゲームを作ろうとしているクラスのゲーム制作の支援を3週間ちょっとで行いました。

この事例のミソは、僅か約1ヶ月で、Wiiリモコンと連動したトロッコに乗りながらのシューティングゲームという、比較的技能が必要なゲームの作成を殆ど一から支援した点です。9月初旬当初は40人の内2人ほどしかゲーム制作にかかわる生徒の方がおらず厳しい状況でした。

動画の一部抜粋。


これに対して、未踏ジュニアスーパークリエータでもあるプロのプログラマーのもりくらげは、初歩的なゲーム制作の説明動画を2本作成し、これを先生に頼んでホームルームの時間にて放送していただく事にしました。狙いは、ゲーム制作に全く触ったことのない人でも、イラストや音楽、ステージの制作といった、プログラミングを必要としない領域に参加できることを伝え、出し物の核となるゲーム制作の協力者を増やす事でした。


結果、ゲーム制作に関われる生徒の方が倍増したことにより、ゲームを当日の出し物として十分な品質へと仕上げることが間に合いました。驚くことに集客数は200名超の行列の絶えないアトラクションになるという、同校においても最高レベルの人気の出し物が催せたそうです。
以下に、担任の先生の声も一部抜粋させていただきます。

京都産業大学附属高校での課題研究支援

次の事例は、京都府の学校における支援事例です。

megumishの講演スライドと、その内容の説明。

こちらの学校の先生からは、今年10月頃にプログラミングを活かした課題研究授業の支援のご相談を頂きました。
…こんな話をするのは無粋かもしれませんが、実は相談を頂いた当初、私達は京都産業大学附属高等学校の先生のお手伝いをできることがないように思えていました。その理由は、生徒の方々は元々情報系科目を履修されている方が多くを占めていた事や、意欲自体も真面目で真摯な生徒の方ばかりで、これ以上生徒の方の何を引き出せばよいのか、私達にも一見して見当がつかなかったためです。

しかし話を丁寧にヒアリングしていくと、生徒の方には自走力がまだ少し足りていないということが徐々に分かってきました。勿論作りたいアプリなどを作る実装力はあるのですが、そもそも自分が何を作ればよいのかあいまいである方や、能動的に何か新しく、やってみてもいいものが作れるかわからないものを作ってみたいという好奇心が、他の学校の生徒の方に比べるとまだ薄いように見受けられたのです。

これに対して、私達ミラパブはアイデアマンのエンジニアであるmegumishによる講演、アドバイス活動を持って生徒の方の意欲に火をつける事を狙いました。

megumishはたった5回の授業支援の中で、生徒の方に「とりあえずやってみる」という習慣を伝授した。

結果、12月時点で課題研究を受けている生徒の方全員がアイデアをまとめ、さらにはアプリのプロトタイプを作ることにまでこぎつけることが出来ました。実はこちらの課題研究の授業はまだ終了はしておらず、最終的な成果発表の場は年明け以降になるそうです。しかし先生としても、たった2ヶ月ほどで生徒の方が自走力と好奇心を持って形になるものを作れるようになることは驚きがあったようで、安心して最終発表を迎えられそうといった所感をいただくことができました。

神奈川県立大船高校における共通テスト対策講座

最後の事例は、神奈川県での事例です。私達は地方での支援だけでなく、都市部での先生方のお手伝いも引き続き続けているのです。

授業風景抜粋。

2025年の10月から11月にかけて、私たちミラパブは神奈川県立大船高等学校にて、高校3年生のクラスの共通テストの情報課木対策の講座を完全無償で催しました。

対象となった方は高校3年生の1クラス(10名)であり、今回はメンターの國武悠人さんが、主にプログラミングの実技問題の箇所についての演習支援をオンライン&オンデマンド動画で行いました。

共通テスト情報は、大きく分けて単語問題とアルゴリズム問題があります。その共通テスト対策における基本的な支援方針としては、情報系の暗記基礎問題は通常の授業と自習に任せ、國武さんだからこそできる、アルゴリズム問題の解き方の指導、および演習を中心に実施していくというものでした。

具体的には、主にAtCoderのABC Contestの過去問題を例題としながら、教科書だけだとイメージしづらく、何をやればよいかわからないアルゴリズム問題対策の方法を指導した次第です。実際の問題では、アルゴリズム問題の箇所も穴埋め形式での出題のようですが、そこを敢えてより難しいAtCoderの問題に対処できる能力を鍛えていただく事により、本番を楽に突破できる基礎体力をつけて頂きました。

最終授業にいただいた感想。こちらは任意回答の箇所にも拘らず、8名もの生徒の方が丁寧に熱い想いを伝えてくれた。

結果、支援開始当初はコードの読解に躓くことも多かった生徒の方々が、たった3回の講座を通じて「先日あった共通テスト模試の情報でプログラミングの問題を解くことが出来た」というお声をいただくまで成長される様子を見る事ができました。

この報告記事執筆時点ではまだ入試の結果は発表されていませんが、結果が分かり次第担当の先生からお教えいただこうと考えています。そして、もし今後別の学校にて情報のテスト周りの対策講座をお願いされた際には、今回いただいた生徒の方の声や入試結果を踏まえた授業改善を元に、更に進化した授業のお手伝いに取り組んでゆく見込みです。

「私たち」以外の素晴らしさについて

ここまででが私たちの発表の紹介となりますが、まとめに入る前に私たち以外の素晴らしい発表事例にも、少しお触れしようと思います。来年以降実践事例報告会に参加してみたい教員の方には、特におすすめの箇所です!

今年の発表全体の雰囲気について:

ミラパブが行った動画発表とは別部門の、
ポスター発表のタイトル一覧。

参加者として全体の所感を述べると、昨年は生成AIの発表が大半でしたが、今年は1年前ほど人工知能に関する事例発表は少なかった印象を受けました。
さらに言えば、これは参加されていない方には意外にも思えるかもしれませんが、情報系の学会にもかかわらず、探究学習に関する発表や悩みが多く共有された印象です。
その理由として考えられるのは、話題になってから数年たって生成AIの性能の限界が見え始めてきたのと、技術の発展の中で改めて、人間の教師は何をすべきなのか、考える教員の方が増えたからではないかと、私は分析しています。

極端なことを言えば、知識だけを教えるのであれば人を介する必要はありません。本を読ませるか、学習アプリを使わせればよいためです。しかし課題研究は、いわば人間とのやり取りの中で、自分の視野を自らの意志で能動的に広げ、そして他者と論理的に分かり合う術として研究のお作法を学ぶ授業。正解を探さず、あり得る一つの最適解を人との交流の中で見つけるこの学問は、同じく一つの正解が用意しづらい情報分野の先生方にとっても極めて縁が深いのです。

全員の発表後に述べられた、須藤調査官による講演資料(一般公開済み)。
文部科学省の今後のご活躍にも、期待したい。

さらに言えば、最後の文部科学省の方による閉幕前の講演においても、総合や探究の時間の重要性が取り上げられていました。ともすると目の前の情報技術の習得に目が行きがちなところ教育現場ですが、こういった総合的な能力を高める授業にこそ、今後は注力していくべきなのかもしれません。

勿論、課題研究等の授業は進学校とそうで無い学校で、生徒のレベルや先生のできる準備の限界から品質に差がつきがちであり、その意味では課題研究を辞めて、基礎的な授業を広めるべきという有識者の方の主張もございます。課題研究は総合的な人間力が問われる以上、教員の方だけでは時間的な問題もあって完ぺきな授業設計が出来ないという問題は、実際に課題研究に関わってきた身として痛感しております。

しかしその足りない面は、私たちミラパブのような外部のプロフェッショナルが関わる仕組みで補えるのではないかと考えています。勿論、単なるビジネスや補助金目当てで動く外部の人間を入れるのは、生徒の未来の為にもならないからなされるべきではありませんが、純粋に公教育を改善しようと思う有志の力を活かせる仕組みは、公教育に必要ではないでしょうか。そういった意味では、国家も課題研究を推進している以上、課題研究の欠点を唯一補える私たちにも更なる進歩が求められていることを改めて認識できた会となりました。

因みに、今回の発表会で教員の方々が発表された動画やポスターは、以下のページからご覧いただけます。より詳しく事例を知りたい方は、ぜひご参照ください。

総評:全国の学校とプロを繋ぐ、その序曲としての発表会

実践事例報告会の発表内容をまとめた、LLMによるまとめの資料。
表面だけならこれで十分だが、実際の発表者の方々の熱意に触れるには、
実際に発表を見に行くほかない。

 
以上のようにして、2025年度の実践事例報告会は幕を閉じました。

全体の所感ですが、今年は例年以上に、一歩踏み出したミラパブの実践事例を披露することが出来たと思います。私達のミッションは「公教育とプロフェッショナルを繋ぐ」ことであり、そのためには全国津々浦々の学校において、先生と力を合わせて、エキスパートの力がないとできない授業支援を展開していく事が必須だと考えています。これまではその理想に対して現実が追い付いてきませんでしたが、今年度は遂に各地の先生方から支援のご相談を頂くようになり、学校現場における外部人材の活用の奇跡的な事例のきっかけが、東京都以外でも広まるようになってくれました。
来年度以降はさらに多くの都道府県で各分野のプロによる、無償での前例のない教育活動を行っていく見込みなので、その意味では今回の発表は教員の皆さんにとっても私たちにとっても、未来に期待を馳せられるものになったのではないかと思います。

今年、まったく接点が無かった中で私達を信頼し授業の相談を入れてくださった全国の教員の皆様、神奈川県情報部会の皆様、そして実践事例報告会を共に形作ってくれた他の登壇者の方々には、改めまして最大限の感謝を表します。
2026年のミラパブは、今回の発表を皮切りとした全国での教育の非営利の支援活動に実直に取り組んでゆく予定です、今後の活動に乞うご期待ください。

最後に、今回の発表で用いた事例紹介の動画を載せておきます、10分の動画なので、お時間のある教員の方はよければご覧ください。



そしてこの記事を読んで、来年度から当団体の無償での学校の授業支援を試してみたいと思われた教員の方は、まずはご相談だけでも大丈夫なので、お気兼ねなくミラパブへの無償授業依頼を以下のページより検討してみてください。

ここまでの記事のご一読、ありがとうございました。

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